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「アイドルアニメ」ブームの今までとこれから

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 最近のテレビアニメのトレンドは何かと問われれば、「アイドルを描いた作品が多くなった」と答える人が多いのではないでしょうか。

 2016年8月現在、深夜枠で『ラブライブ!サンシャイン!!』『B-PROJECT~鼓動*アンビシャス~』『ツキウタ。THE ANIMATION 』『SHOW BY ROCK!! しょ~と!!』があり、夕方には女児向けの『アイカツスターズ!』『プリパラ』も放送されています。
 秋期はさらに増えて、『アイドルメモリーズ』『うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEレジェンドスター』『ドリフェス』『SHOW BY ROCK!! #』『マジきゅんっ!ルネッサンス』が始まります。
 翌2017年にも『あんさんぶるスターズ!』『アイドリッシュセブン』『BanG Dream!』といった新作や、『戦姫絶唱シンフォギア』『スタミュ』の続編が待機中です。

 まさにブームと言ってさしつかえのない現状なのですが、そもそも芸能界を舞台とした、もしくは、アイドルが重要なキャラクターとして登場するアニメは、80年代の『超時空要塞マクロス』『魔法の天使クリィミーマミ』を嚆矢として、現在まで連綿と作られ続けてきました。

 アイドルアニメには、新人アイドルのプロモーションという大きな役割があります。『マクロス』の飯島真理、『クリィミーマミ』の太田貴子に始まって、『アイドル伝説えり子』の田村英里子、『きらりん☆レボリューション』の久住小春など、実在のアイドルがモデルであったり、声優を担当する作品は珍しいものではありませんでした。

 現在のアイドルアニメが、以前と異なってきたのは、アイドルを演じる声優たち自身が、そのままアイドルとしてプロモーションされている点にあります。

アイドル声優」という言葉が生まれたのは1990年代と言われていますが、アニメ作品を通して声優をアイドルとして売り出すケースも、その頃から増えていきます。『銀河お嬢様伝説ユナ』の横山智佐、『アイドル防衛隊ハミングバード』の椎名へきる、『KEY THE METAL IDOL』の岩男潤子などが代表例でしょう。これらは、OVAというコアなファン向けのリリース形態でしたが、今や地上波でも堂々と放送されるようになったわけです。(児童向けの『プリパラ』で主演と楽曲を担当しているのが、声優とアイドルの両立をうたうi☆Risというのは何やら象徴的です)

 こうした「声優アイドルアニメ」ブームに先鞭をつけたのが2005年の『魔法先生ネギま!』でしょう。内容がアイドル物ではないため、「アイドルアニメの歴史」という文脈では、わりと見落とされがちなのですが、キャストをアイドルに見立ててユニットを結成し、学校の制服をコスチュームにするなど、のちの作品に与えた影響は無視できないと思います。

 2009年には『けいおん!』が放送されます。CDが続々とヒットチャート上位にランクインするなど、アニメファン以外からも注目を集めました。2010年に『ラブライブ!』が雑誌企画としてスタートし、2011年には『THE IDOLM@STER』『うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVE1000%』が相次いでテレビ放送されます。これらの商業的な成功が、2016年現在のアイドルアニメの隆盛につながっているのは間違いないでしょう。

 さらに、アイドルアニメが増えている理由として見逃せないのが、CGを含めたアニメーション技術の向上です。かつては、テレビアニメでコンサートの場面を描くというのは大変なことでした。『超時空要塞マクロス』の「愛は流れる」、『機動戦艦ナデシコ』の「明日の「艦長」は君だ!」、あるいは『涼宮ハルヒの憂鬱』の「ライブ・ア・ライブ」といったエピソードが放送当時インパクトを視聴者に与えたのは、クオリティの高い映像と楽曲によるものでした。アイドルをテーマにするのであれば、こうしたシーンを複数用意しないといけないわけですから大変です。
アイカツ』や『ラブライブ!』の成功は、CGによるダンス描写を抜きにしては考えられません。(逆に手描きにこだわった『Wake Up, Girls!』や『アイドルマスター シンデレラガールズ』は、制作スケジュールが破綻しています)

 さらに、もうひとつ挙げなくなてはならないのが、スマートフォンを使ったゲームの台頭でしょう。いわゆるガラケーの頃から、アイドルが登場するゲームは数多く作られていますが、高品質の音楽やアニメが盛り込めるようになったことで、声優の重要性は、さらに高まっています。
 2013年サービス開始の『ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル』により、アイドル物はリズムゲームが主流となりました。2015年には『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』も登場し、女性アイドル物としては二強状態が続いています。

 一方、男性アイドル物は、『あんさんぶるスターズ!』『アイドリッシュセブン』『アイ☆チュウ』『夢色キャスト』『アイドルマスターSideM』『ドリフェス』などがあり、群雄割拠といったところでしょうか。

 現在も、『Tokyo 7th シスターズ』『8 beat Story♪』『アイドルコネクト*』などのタイトルが続々と登場しており、児童向けの『アイカツ』でさえ『アイカツ!フォトonステージ!!』をリリースしているほどです。一方で早々と店じまいしてしまうケースも多く、中には『うた☆プリアイランド』のようなビッグタイトルも含まれるのですから、アニメ以上に熾烈な競争がおこなわれているようです。

 厳密にはアイドルアニメではないのですが、萌え四コママンガを原作とする、いわゆる「日常系」アニメにも触れる必要があるでしょう。『あずまんが大王』『ひだまりスケッチ』あたりから数えると、ジャンルとしては、それなりの歴史を持っているわけですが、最近では、新人女性声優の登竜門的な場としての機能が強まっています。『きんいろモザイク』のRhodanthe*、『ご注文はうさぎですか?』のPetit Rabbit's など、「劇中にアイドルは登場しないけれど、声優がアイドルユニットとして活動する」パターンが非常に増えたのです。今年もすでに『あんハピ♪』『三者三葉』『うさかめ』が放送されました。

 声優ユニットの人気は、そのまま作品への支持とつながります。『ゆるゆり』が第3期まで放送されたのは、七森中☆ごらく部の人気抜きには考えられないでしょうし、『ミルキィホームズ』も、今やアニメとユニットの主従が逆転しているように映ります。ちなみに、この二つのユニットは別作品の主題歌を歌ったことがある(『マイリトルポニー~トモダチは魔法~』『カードファイト!! ヴァンガード』等)のですが、Wake Up, Girls!もこの秋に『灼熱の卓球娘』という全く関係ない作品のエンディング曲を担当します。

 最後に、このブームが今後どうなっていくかについて少し考えてみましょう。

 まずは現状として、作品ごとの差別化が非常に難しくなっていることが指摘できます。今のアイドル物は、大きく分けて、芸能界を舞台にするものと、学園内の活動として描くものと二つの路線がありますが、どちらにせよ、世界の広さもキャラクターたちの設定も、どうしても限られてきます。ローカルアイドルや地下アイドルを題材にした変化球な作品も登場しましたが、王道を目指すと言うことは、反面、似かよった題材で勝負するということでもあります。

 数が増えれば、それだけ飽きられてしまう可能性も高くなります。『ラブライブ!』や『THE IDOLM@STER』のように、順調に次世代のアイドルにバトンタッチできている作品もありますが、今後はコンテンツとしての人気を長持ちさせるのは、さらに難しくなっていくことでしょう。

 応援するファンの負担も大きくなっています。アイドル物は、パッケージソフトやグッズはもとより、関連のCDやコンサート代など、かなりの支出を強いてきます。ゲームであれば、さらに課金が加わります。この不景気な中で、どこまで疲弊せずについてきてくれるのか、必ずしも楽観視はできないでしょう。

 やや批判的なことばかり書いてしまいましたが、『けいおん!』や『ラブライブ!』の社会現象とも言われるようなヒットが示しているように、アイドルアニメというものは、本来、幅広い層に届くだけの魅力を持ちうるジャンルだと思います。小さな市場に向けてアピールするだけでなく、より普遍的な楽しさを追求した作品が生まれることに期待します。