アニメで夜もすがら

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配信ビジネスの台頭はアニメを変える?

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 2016年のアニメ業界を振り返ってみると「パッケージビジネスから配信ビジネスへの転換」が、いよいよ本格化してきた1年であったと言えるでしょう。

 Netflixやアマゾンプライムビデオなど海外発の配信サービスが上陸し、迎え撃つdアニメストアやAbemaTVのような日本のサービスも存在感を増してきました。景気の良い話もいろいろと聞こえてきます。真偽の程は不明ですが、某スチームパンク系ゾンビ物や、某ご当地ロボット物は、契約料だけで制作費のかなりの部分を回収できたとも噂されています。

 それ以上に大きかったのが、海外市場の拡大で、とりわけ中国の躍進ぶりは、さまざまなニュースでも取り上げられています。海外では、日本よりも早くDVD市場が崩壊したこともあり、配信への転換がいち早く試みられていたのですが、この数年で日本のアニメも重要なコンテンツとしての地位をさらに高めています。これまた真偽の程は不明ですが、某少年ジャンプ連載アニメは、海外での契約料が数倍に跳ね上がったという噂もあります。

「パッケージから配信へ」 この流れを別の言葉で言い換えれば、マニア向けのビジネスから薄利多売への転換ということになります。1本数千円の「円盤」を購入していた層から、月額数百円を支払う層へターゲットが変わるわけです。これまでの深夜アニメは、無料で放送を見る多くの層と、作品に「お布施」をするごくわずかな層の二極化した視聴者が支えてきました。実はこれは、ソーシャルゲームと良く似ています。プレイヤーの大半は無料でゲームを楽しんでおり、ごく一部の重課金者によって支えられているビジネスモデルは、古くからあるやり方なのでした。それがアニメでは通用しなくなってきた今、突破口としての配信ビジネスへの期待は高まるばかりなのです。

 出資する企業が変われば、作られるアニメの内容にも変化が生まれるのは必然でしょう。かつて、パチンコ・パチスロマネーがアニメ業界に流入してきたのは、もう10年以上も前になります。これにより『北斗の拳』『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』など懐かしいコンテンツが復活を遂げ、『アクエリオンEVOL』『マジェスティックプリンス』などロボットアニメが数多く作られました。どちらもパチスロ化でヒットが望めるジャンルだからです。また、ここ数年ではソーシャルゲームのアニメ化が大流行しており、今期も『スクールガール ストライカーズ』『チェイン・クロニクル』があります。

 今後は、配信企業が大きな力を持つことが予想されます。すでに、アメリカのクランチロールや中国のビリビリは、日本のアニメに出資を始めています。配信の権利を後から買うだけでなく、積極的に製作に加わっているわけですね。中国のハオライナーズのように製作会社を所有して、日本との合作に取り組むケースも、今後増えていきそうです。

 その一方で、最初にも書いたように、配信ビジネスの台頭によって、Blu-rayやDVDを売るパッケージビジネスは、いよいよ追いつめられてきました。アニプレックスのようにソーシャルゲームに手を出したり、ポニーキャニオンのようにライトノベルのレ-ベルを持ったりと、ここ数年で、新事業を立ち上げている会社も目立ってきています。

 現在のアニメは「製作委員会」方式で作られているものが大半です。簡単に説明すれば、複数の企業が資金を出し合い、役割を分担することで1本の作品を作り上げているわけですが、この際、投資額の大きさによって、委員会の中での影響力が決まります。

 雑誌やニコニコ生放送などによく登場する「名物」プロデューサーや宣伝マンの方々は、Blu-rayやDVDを製造販売するメーカーに勤務している場合が多いですよね。これらの企業の出資率が下がり発言力が低下すれば、深夜アニメを作り上げてきたプロたちの活躍の場も減っていくことになるわけです。もっと影響力のある会社に籍を移すのか、思い切って独立するのか、選択を迫られる人も出てくるでしょう。

 このように、ここ数年でアニメをめぐる状況は大きく変わっていく可能性があります。作品が流通する経路も、制作する企業や人材も、そして何より、受け手である視聴者層が、様変わりしていきそうだからです。

 もっとも、これは配信市場が、このまま拡大していくという前提での話です。実のところ、そんなに上手く行くのか、ただのバブルなのではないのか、と言った懐疑の声もいろいろ聞こえてきます。AbemaTVが大赤字を出しているのが典型なように、今は無理をしてでも資金を投入して市場を維持している状態です。これが一段落したら、契約料の高騰も落ち着くでしょうし、その時、かつてのDVD市場に匹敵するだけのビジネス規模となっているのかと言えば、まだまだ予断を許さないでしょう。